探偵経験
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 ケース2〜名古屋進出〜


じつは、せっかく紹介されてきた名古屋。
ここで、みっちり探偵としての経験を積み、いずれは探偵業で独立、と考えていたのだけれど、探偵で独立するのは実際はそんなに甘くはなかった。

紹介された人自体が、“浮気調査専門”的な考えの人だったのだ。
そんな探偵事務所があるとは、ちょっと驚きだった。

アルバイトでいた大阪でも、ぼくの手伝えるものと言ったら、浮気調査か、営業の尾行調査。多少の聞き込みくらいだったから、仕事としてはあまり変わりが無いので、楽と言えば、楽なのだけれど。
でも、ぼくが手伝うことのできなかった、行方調査や、素行調査をこれからは経験できると思っていただけにショックを受けてしまう。

これって、経験を積んだことにはならないし。
前に、友人の母親が、“行方を探せてなんぼ”と言っていた言葉が忘れられない。
行方探しなんて、1年に1回も入らないほどの物件。

そんな中、昔、生き別れた母親を探す調査のときは、1年近くかかったそうなのだが、依頼人に泣いて喜んでもらえて、これのために探偵をしたんだって思えるくらいの達成感だったとか。
実際に見つかった人が、自分の想像とはるかに違っていたり、せっかく何十年ぶりに会えたのに、うっとおしがられてショックを受ける結果になることもあるそうなのだが、自分が何年も思い悩んだ相手が、全くイメージと違っていることで、逆にすっきりした、とでもいうように、晴れた表情で探偵の調査を終えることができると、それはそれで、達成感にもつながるのだとか。

ずっと、美化したイメージを持っていることも、それなりにしんどかったりするんだな。
そんな話しを聞いて、ある程度の腕が出来たら、ぼくも自分で考えて動けるようになるかと、多少の期待があったのに・・・。

入社してすぐに言われたのが、車の運転。
この社長、車の運転が人より上手くないと、探偵なんて出来ない、と常日頃から叱咤されていた。
でも、大学を卒業したばかりの貧乏なぼくには、車を買って練習するほどのカイショはない。

呆れた社長が、自分の知り合いから安く購入した、
いかにも昔の車的なやつを社用車として購入してくれた。
この点は、ぼくにとってはとてもラッキーなことだった。

というか、名古屋で仕事して手に入れた知識は、何をおいても車の運転だったかもしれない。

ぼくが感じたこと。
それは、名古屋の運転は、大阪よりはるかに怖いということ。
実際に名古屋で運転してみて、やたら幅の広い一方通行や、平気で赤信号に変わっても交差点につっこんでくる車に、かなり鍛えられたと思う。これは探偵をやっていなくても、名古屋の道を走っていたら鍛えられるのだろうけど。





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